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Culture
with Whisky.
戸塚 繁
Shigeru Totsuka
- 戸塚酒造株式会社 十六代目蔵元
- 軽井沢ウイスキー株式会社 代表取締役社長
- Profile
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- 1974年 長野県佐久市生まれ
- 1994年 東京農業短期大学醸造学科卒業
- 2014年 戸塚酒造株式会社16代蔵元に就任
- 2019年 軽井沢ウイスキー株式会社を設立
1653年創業、
老舗酒造の長男として誕生。
私の生家である戸塚酒造は、1653(承応2)年に徳川家の家臣だった初代戸塚平右衛門が創業した老舗酒蔵です。長男である私が蔵元として後を継ぐのは自然な流れでしたので、幼い頃からその自覚を抱いて成長しました。醸造学科のある東京農業短期大学に進学し、卒業後地元に戻るまでの5年間は東京日本橋にある酒類卸問屋で修業していました。
東京で出会った軽井沢の伝説。
旧軽井沢ウイスキーに出会ったのは酒類卸問屋で働いていた頃のことです。洋酒営業でバー巡りをする中「地元のお酒がある」と勧めていただきました。まろやかで味わい深く、「軽井沢にこんなに美味しいウイスキーをつくる蒸留所があるのか」と衝撃を受けたことを鮮明に覚えています。その後戸塚酒造が輸出事業を展開するタイミングで地元に戻りましたが、この時の衝撃は今日まで色褪せていません。
戸塚酒造16代目蔵元就任。
地元に戻ってからも、アメリカ西海岸の販路開拓に尽力するなど、新しいことに果敢にチャレンジしてきました。軽井沢に蒸留所をつくりたい、ウイスキーをつくりたい、という思いはずっとあったのですが、軽井沢は土地規則が厳しく、費用面でも環境面でも生半可な覚悟では実現できません。16代目蔵元として戸塚酒造の社長に就任したのは40歳の頃ですが、その後も軽井沢の土壌を知るために米や芋の栽培に取り組み、たくさんの方々と交流を深めながら地道に地固めを続けてきた結果、本物の「軽井沢蒸留所」としての始動が叶いました。
レジェンドの想いと技術が集結。
工場長を務めるのは旧メルシャン軽井沢蒸留所でウイスキー・ディスティラーを務めた中里美行氏です。彼を迎え入れることができた背景には、同じく旧メルシャン軽井沢蒸留所でモルト・マスターとして活躍し、国産初モルトウイスキーを手掛けた内堀修省氏の存在がありました。残念ながら内堀氏は2023年に逝去されましたが、彼を顧問として創業できたことは当蒸留所の誇りです。
軽井沢の地で蒸留・熟成を行うだけでなく、レジェンドたちの想いと技術が集結していること、これらすべての要素が、私たちが「本物の軽井沢ウイスキー」を名乗る理由です。
今 新たに、
伝説が始まる。
新設の蒸留所がニューメイク(熟成期間3年未満)を出すことが多い中、私たちは最低10年の熟成期間を置くと決めています。この決断ができたのは、私が戸塚酒造の370年の歴史を背負っていることも由来しているかもしれません。
私たちが本当の意味で評価されるのはずっと先のことで、それは私の地位を次の世代に引き継いだあとかもしれない。でもそれでいいんです。今の子どもたちが大人になる頃、私たちがつくるウイスキーを軽井沢の誇りに感じてもらえたら本望です。ウイスキーを通じて「軽井沢の文化を創る」気概を持って、人生をかけて取り組んでいきます。